「ゆっくり歩く」書評:ケアを“ともに歩く営み”として再発見する

本書評が取り上げる『ゆっくり歩く』は、長年「ケアの倫理」の理論研究に取り組んできた小川公代氏が、母のパーキンソン病を契機に“ケアの実践者”という立場に立たされるという転換点から始まる。
書評では、これまで抽象的・理念的に語られがちだった「ケア」が、突然に目の前の具体的な問題として立ち上がる瞬間が丁寧に描かれている。
母の手を取り、速度を落とし、互いの戸惑いや苛立ちを抱えながら「ゆっくり」歩く営みは、非効率に見えて実は人間の関係性を豊かに編み直す時間へと変わっていく。
特に印象的なのは、著者が母を励ますために、自らがこれまで愛読してきた物語を惜しみなく共有する場面である。
文学作品から宗教的テキスト、ドキュメンタリーまで、母の心に寄り添う物語を探し語ることが、二人にとって“共同作業”となる。
この姿は、物語を「自分のためだけに所有する」状態を超えて、他者と分かち合うことで再び意味を取り戻す行為として提…

本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。

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