パーキンソン病は治るのか — 治療の「いま」と、これから
パーキンソン病は治るのか。「根治」の現在地と、症状をコントロールしながら暮らすという治療の考え方、そして研究の最前線までを、誇張も悲観もせず正確にお伝えします。
✓監修 池中 建介・大阪大学 神経内科学講座「パーキンソン病は治りますか?」——診断を受けたあと、主治医に聞きたくても聞けなかったこの質問を、検索窓に打ち込んだ方も多いと思います。
この問いには、正直にお答えする必要があります。現時点で、パーキンソン病を完全に治す(根治する)方法は、まだ確立されていません。ただ、これだけで終わる話ではありません。今のパーキンソン病治療は「症状をコントロールしながら、長く付き合っていく」ことができる段階にあり、研究も着実に前へ進んでいます。この記事では、その「いま」と「これから」を、誇張も悲観もせず、正確にお伝えします。
結論:根治はまだ。でも「症状を緩和できる病気」です
「治らない」と聞くと、多くの方が強い不安を感じます。でも、この言葉の意味を正確に理解すると、受け止め方が少し変わるかもしれません。
現在のパーキンソン病治療は、糖尿病や高血圧と少し似ています。これらの病気も、多くの場合「完全に治す」のではなく、「薬や生活習慣でコントロールしながら付き合っていく」病気です。パーキンソン病も、治療によって症状をやわらげ、日常生活を保ちながら過ごすことができます。ただし、糖尿病や高血圧とは違って、パーキンソン病は時間とともに少しずつ進行し、必要な薬も増えていきます。
つまり、「治らない=何もできない」ではありません。「症状をコントロールする手段がある」——これが、今のパーキンソン病の正確な現在地です。
「治らない」の意味を、正しく理解する
パーキンソン病は、脳の中でドパミンという物質を作る神経細胞が、少しずつ減っていくことで起こります。今の医療では、この減ってしまった神経細胞を元どおりに戻すことや、これ以上神経細胞が減ってしまうことをとめることはできません。これが「根治はまだない」と言われる理由です。
一方で、減ったドパミンを薬で補ったり、その働きを助けたりすることはできます。だからこそ、治療で症状をコントロールできるのです。「治らない」という言葉は、「打つ手がない」という意味ではまったくない、ということを覚えておいてください。
治療はここまで進んでいる
パーキンソン病の治療には、症状の段階に応じて複数の選択肢が用意されています。
薬物療法:治療の土台
治療の中心は薬です。不足したドパミンを補うL-ドパ(レボドパ)をはじめ、さまざまな種類の薬があり、症状やライフスタイルに合わせて組み合わせます。診断されて間もない時期は、薬がよく効くことが多く、パーキンソン病を発症する前に近い状態で生活を続けられる方が多くいます。
進行期の選択肢:デバイス補助療法・手術
長く付き合ううちに、薬の効果が変動しやすくなる時期が来ることがあります。そうした段階では、脳深部刺激療法(DBS)などの手術や、デバイスを使った投薬などのデバイス補助療法という選択肢があります。これらは、薬だけでは調整が難しくなった症状を、より安定させることを目指す治療です。
研究は、着実に前へ進んでいる
「根治はまだ」とお伝えしましたが、その一方で、病気の進行そのものを食い止めたり、失われた神経細胞を補ったりすることを目指す研究が、世界中で進められています。
iPS細胞を使った再生医療
近年、大きな注目を集めているのが、iPS細胞などから作ったドパミン神経のもとになる細胞を、脳に移植する再生医療です。京都大学を中心とした治験で安全性と有効性を示唆する結果が報告され、2026年3月6日には、この技術を用いた治療薬が国から「条件付き・期限付き」で承認されました。
これは大きな前進です。ただし、いくつか正確に理解しておきたい点があります。
- 「条件付き・期限付き承認」とは、有効性をこれからさらに確かめていく段階で、限られた条件のもとで使用が認められた、という意味です。すべての患者さんがすぐに受けられる標準的な治療になった、ということではありません
- どのような方に適した治療なのかは、これから検討が重ねられていく段階です
- この治療について気になる場合は、必ず主治医に相談していただき、インターネットの情報だけで判断しないでください
その他の研究
このほかにも、病気の進行を抑えることを目指す薬(疾患修飾療法)など、さまざまな研究が進んでいます。
「治る日」を待つあいだに、できること
研究の進歩は希望ですが、それを待つ「いま」も、あなたの大切な毎日です。今の治療を続けながら生活を整えることが、将来どんな治療が登場したときにも、それを最大限に活かせる体の状態につながります。
「治る日」を待ちながら、今日を大切に過ごす。その両方を、olneは応援しています。
まとめ
- 現時点で、パーキンソン病を根治する方法はまだ確立されていません
- ただし「治らない=打つ手がない」ではなく、症状をコントロールする手段がある病気です
- 薬物療法を土台に、進行期にはDBSやデバイス補助療法という選択肢もあります
- iPS細胞を用いた再生医療など、研究は着実に前進しています(ただし現時点では限られた条件での承認段階)
- 新しい治療の情報は、必ず主治医と相談しながら受け止めてください
「治りますか?」という質問は、主治医に聞いていい質問です。次の診察で、あなたの言葉で聞いてみてください。
寿命への影響については「パーキンソン病と寿命 — 「あと何年」ではなく、これからの時間の話」でご説明しています。
参考文献
- 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
- 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」
- 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)発表資料/第I/II相治験の報告
- 住友ファーマ株式会社「日本における非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の製造販売承認(条件及び期限付承認)取得に関するお知らせ」(2026年3月6日)
本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。
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