パーキンソン病の症状の現れ方
パーキンソン病の症状の現れ方は個人によって大きく異なります。これは、病気の進行速度、最初に現れる症状、影響を受ける体の部位、さらには非運動症状の有無などが人それぞれ異なるためです。
✓監修 池中 建介・大阪大学 神経内科学講座
症状の個人差の主なポイント
(1) 初期症状の違い
- 震え(静止時振戦)が最初に現れる人が多いが、震えのないタイプの人もいる。
- 動作が遅くなる(寡動)ことが最初に気になる場合もある。ほとんどのパーキンソン病患者さんは何らかの寡動症状を有しています。
- 筋肉のこわばり(筋強剛)が初期から目立つ人もいる。
- 非運動症状(便秘、嗅覚障害、うつ、不眠など)が最初に出ることもある。
(2) 運動症状の個人差
パーキンソン病の運動症状には個人差があり、大きく振戦優位型、寡動・筋固縮優位型、体軸症状優位型の3つに分けられます。
① 振戦優位型
このタイプでは、じっとしているときに手が震える「静止時振戦」が主な症状として現れます。特に手に症状が出やすく、動きの遅さや筋肉のこわばりは比較的軽いことが多いです。進行のスピードもゆっくりな傾向があります。振戦は、親指と人差し指をこするような「ピルローリング様振戦」と呼ばれる特徴的な動きを示すことがあります。
② 寡動・筋固縮優位型
このタイプでは、手足の動きが遅くなる「寡動」や、筋肉のこわばりが目立ちます。振戦はあまり見られず、特に手や足の動作がぎこちなくなり、日常生活の動作がしづらくなることが多いです。筋固縮は、腕や脚を動かしたときに抵抗を感じる「鉛管様固縮」や、ガクガクとした動きが見られる「歯車様固縮」として現れることがあります。このタイプは、振戦優位型に比べると進行は早い傾向で、後述の体軸症状が加わってくるとさらに早くなります。
③ 体軸症状優位型
このタイプでは、姿勢の保ちにくさや歩行の障害が主な症状として現れます。高齢で発症した人に多くみられ、歩こうとしたときに足がすくんで動けなくなる「すくみ足」や、前かがみの姿勢、歩くとだんだん速くなって止まりにくくなる「突進歩行」が特徴的です。また、転びやすくなるため、日常生活への影響が大きいです。このタイプは、認知機能の低下とも関連があるとされ、進行が比較的速い傾向にあります。
運動症状の進行パターン
パーキンソン病の運動症状は、通常は片側の手または足から始まり、その後、同じ側のもう一方の手足へと広がります。さらに、反対側の手または足に症状が現れ、最終的にその側のもう一方の手足にも広がることが多いです。この進行の仕方は、「N字型」と呼ばれることがあります。ただし、症状の広がり方には個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。また、進行の速さも人によって異なります。振戦優位型は進行がゆっくりなことが多いですが、体軸症状優位型は比較的早く進行する傾向があります。
(3) 非運動症状の違い
パーキンソン病では、運動症状だけでなく、さまざまな非運動症状も現れます。これらの症状の出方には個人差があり、非運動症状が強く出る人もいれば、ほとんど感じない人もいます。
① 自律神経症状
自律神経の働きが低下することで、便秘や起立性低血圧、発汗異常、排尿障害などが起こることがあります。便秘は多くの患者さんでみられ、病気の初期から見られることもあります。起立性低血圧は、立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつきやめまいを感じる症状です。また、一部の人では異常な発汗がみられ、特に顔や上半身に汗をかきやすくなることがあります。
② 感覚の異常
嗅覚障害は、パーキンソン病の初期から現れることが多く、食べ物の匂いがわかりにくくなることがあります。また、痛みや異常な感覚を訴える人もおり、肩や腰に原因不明の痛みが続くことがあります。
③ 睡眠障害
パーキンソン病では、不眠、日中の眠気、レム睡眠行動異常(夢を見ながら大きく動いたり、声を出したりする症状)などがよくみられます。特にレム睡眠行動異常は、パーキンソン病の発症前から現れることがあり、早期の特徴の一つとされています。
④ 精神・認知機能の変化
うつ症状や不安を感じる人もいれば、気分の落ち込みが少ない人もいます。認知機能の低下も個人差があり、記憶力や注意力が低下する人もいれば、ほとんど影響がない人もいます。また、幻視や妄想などの精神症状が現れることもあり、特に病気の進行に伴って増える傾向があります。
非運動症状の個人差
非運動症状の現れ方には大きな個人差があり、ある症状が強く出る人もいれば、ほとんど感じない人もいます。例えば、便秘や嗅覚障害が強く出る人もいれば、睡眠障害が主な問題となる人もいます。精神症状や認知機能の低下が目立つ人もいれば、精神的な影響が少ない人もいます。これらの非運動症状は、生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあるため、症状に応じた適切な対応が大切です。
症状の個人差が生じる要因
(1) 年齢
若年発症(50歳未満)の人は、進行が遅く、振戦が目立つことが多い。高齢発症(60歳以上)の人は、バランス障害や転倒リスクが早く現れることがある。
(2) 遺伝的・環境的要因
遺伝的にパーキンソン病を発症しやすいタイプとそうでないタイプがある。環境因子(農薬や化学物質への曝露など)が関係している場合、症状の出方が異なる可能性がある。
(3) 治療への反応
薬が良く効く人もいれば、効果が不安定になりやすい人もいる。一部の人は副作用(ジスキネジアなど)が出やすいことがある。
まとめ
パーキンソン病は、一人ひとり異なる症状の現れ方や進行パターンを持つ病気です。
- 初期症状も人それぞれ違い、進行スピードや影響を受ける部位も異なります。
- 「震えが強いタイプ」「動作が遅くなるタイプ」「バランス障害が目立つタイプ」など、表現型も分かれます。
- 非運動症状(便秘、嗅覚障害、不眠、うつなど)も人によって現れ方が異なります。
そのため、個別に適した治療やリハビリ、生活の工夫が必要です。
医療監修 池中 建介/大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学講座
本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。
診断されたばかりの方へ
診断されたばかりの方はこちら。見通し・治療・制度の情報を、読む順にご案内します。
パーキンソン病とともに生きる毎日を、
生活のリズムから支えるデジタルコンパニオン
知りたい情報をあつめることから、薬・栄養・活動を「その日の時間」に合わせて整えることまで。患者さんとご家族の毎日を支えます。