パーキンソン病と寿命 — 「あと何年」ではなく、これからの時間の話

パーキンソン病と診断されたとき、多くの方が最初に不安になるのが寿命のこと。データが示す実際の見通しと、「寿命」よりも大切にしたい「健康寿命」という考え方を、順番にご説明します。

監修 池中 建介・大阪大学 神経内科学講座

パーキンソン病と診断されて、まず頭に浮かんだのが寿命のことだった、そういう方は、とても多くいらっしゃいます。検索するのも怖い、でも知らないままなのも怖い。そんな気持ちでこのページにたどり着いたのかもしれません。

先に結論をお伝えします。パーキンソン病になっても、寿命は大きくは変わりません。この記事では、その根拠となるデータと、「寿命」よりも大切にしたい考え方を、順番にご説明します。

まず結論:パーキンソン病で寿命は大きく変わりません

国の難病研究班がまとめている公式情報(難病情報センター)では、パーキンソン病の生命予後——つまり寿命への影響——について、「決して悪くなく、平均余命は一般より2〜3年短いだけ」と説明されています。

「2〜3年」という数字を見て、どう感じるでしょうか。短くなるのか、と受け止める方もいれば、ほとんど変わらないのか、と感じる方もいると思います。大切なのは、この数字が意味していることです。

  • がんのように「余命◯ヶ月」という考え方をする病気ではありません
  • 診断されたその日から、何かが急に変わるわけではありません
  • 適切な治療を続けることで、診断後も長い年月を、それまでに近い形で過ごしている方が大勢います

そしてこの数字は「平均」です。発症した年齢や、治療との付き合い方によって、見通しは一人ひとり違います。あなた自身の見通しについて一番正確に話せるのは、あなたを診ている主治医です。

目にする情報が、いまの医療と食い違うことがあります

パーキンソン病について調べていると、書かれていることがばらばらで、どれを信じればよいのかわからなくなることがあります。とくに不安をかき立てられるのは、進行した状態だけを取り上げた説明や、古い時代の記録をもとにした記述です。

パーキンソン病の治療薬は、長い年月をかけて発展してきました

パーキンソン病の治療は、L-ドパ(レボドパ)という薬が使われるようになった1960年代を境に、大きく変わりました。それ以前は症状を十分に抑える手立てが乏しく、原因不明の不治の病という捉え方をされていました。1960年代に始まった薬による治療は、それから現在に至るまで長い年月をかけて発展してきたもので、いまもなお完成には至っていません。

現在は、L-ドパをはじめとする複数の薬に加えて、リハビリテーション、進行期にはデバイス補助療法や手術と、段階に応じた選択肢が用意されています。かつては改善できなかった合併症や薬の副作用が一部克服されるようになってきているなど、状況は変わってきています。

調べていて不安になる記述に出会ったときは、それがいつの時点の話なのかを確かめてみてください。ご覧になった情報が、いまのあなたの見通しを語るものとは限りません。

「寿命」より大切な、「健康寿命」という考え方

寿命の数字と同じくらい——あるいはそれ以上に大切なのが、「元気に動ける時間をどれだけ長く保つか」という視点です。これを「健康寿命」と呼びます。

パーキンソン病は、ゆっくりと進行する病気です。だからこそ、診断された今この時点での過ごし方が、5年後・10年後の暮らしやすさに影響します。裏を返せば、今日からできることがある病気だということです。

「あと何年生きられるか」という問いは、自分ではコントロールできない不安に向かいます。「元気な時間をどう延ばすか」という問いは、今日の行動につながります。この記事の残りは、後者の問いに答えるためのものです。

長く元気に過ごすために、今わかっていること

薬を、自己判断でやめないこと

パーキンソン病の治療の土台は薬物療法です。症状が落ち着いてくると「もう飲まなくてもいいのでは」と感じる時期がありますが、自己判断での中断は症状の悪化につながります。量やタイミングの調整は、必ず主治医と相談しながら行ってください。

体を動かし続けること

運動を続けることが、運動機能の維持、ひいては病気の進行にも良い影響を与えることがわかってきています。特別なトレーニングである必要はなく、散歩やストレッチなど、続けられる形で毎日体を動かすことが大切です。

パーキンソン病の症状を和らげるために適度な運動は必要か?

転倒と、飲み込みの変化に気をつけること

パーキンソン病と長く付き合ううえで気をつけたいのが、転倒によるけがと、飲み込みの機能(嚥下)の変化です。これらは、症状の適切な把握と、適切な対処でリスクを減らすことができます。

転倒を防ぐために気をつけるべきポイント食事の際に注意すべきこと


まとめ:数字に振り回されないために

  • 公式な難病情報では、パーキンソン病の生命予後は「決して悪くない」とされています
  • 治療の選択肢は年々増えており、かつての「不治の病」というイメージは、いまの医療には当てはまりません
  • 大切なのは寿命の数字より、元気に動ける時間(健康寿命)をどう保つか
  • そのために今日からできること——服薬の継続、運動、症状の把握と対処——があります
  • あなた自身の見通しは、平均の数字ではなく、主治医との対話の中にあります

不安が消えないときは、その不安をそのまま主治医に伝えてみてください。「寿命が心配です」という一言は、診察で聞いていい質問です。

あわせて、元気に過ごすための具体的な暮らし方は「パーキンソン病と診断されても、長く元気に過ごせるのか?」、進行の速さの考え方は「パーキンソン病の進行はどのくらいの速さ? ホーン・ヤールの重症度分類とあわせて解説」でご説明しています。

参考文献

  • 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」(厚生労働省 難治性疾患政策研究班)
  • Macleod AD, et al. Mortality in Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. Mov Disord. 2014
  • 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」
医療監修 池中 建介/大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学講座

本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。

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