パーキンソン病で、手術が必要になることはあるのか?

パーキンソン病の治療は主に薬物療法ですが、症状が進行し、薬の効果が不安定になった場合に「脳深部刺激療法(DBS)」などの手術が検討されることがあります。手術はすべての患者さんに必要なわけではなく、適応条件を満たした人に対して行われます。

監修 池中 建介・大阪大学 神経内科学講座
手術の対象になるのはどんな人?

手術が検討されるのは、次のような場合です。

薬の効果が不安定になってきた人

  • 「オン・オフ現象」(薬が効く時間と効かない時間が短時間で切り替わる)が強い
  • 「ウェアリング・オフ」(薬の効果が短くなり、次の服用まで症状が戻る)
  • 「ジスキネジア(不随意運動)」(薬の副作用として体が勝手に動いてしまう)

「5・2・1」基準

これらの症状とその程度をわかりやすくまとめて「5・2・1」基準とも言われます。つまり、

  1. 1日に5回以上に分けたレボドパ内服が必要になっている
  2. 1日に2時間以上のオフ時間がある
  3. 1日に1時間以上の困るくらいのジスキネジアがある

そのほか、以下のようなことも考慮して治療を検討します

  • 薬が効かない運動症状に悩んでいる人(震え(振戦)が強く、薬では十分に抑えられない/片側の症状が強く、薬剤では左右のバランスが整えにくい)
  • 比較的若く、認知機能が保たれている人(一般的に、70歳以下で認知機能が大きく低下していない場合が適応。認知症がある場合や、うつ症状が強い場合は手術が難しい)

手術は、症状が薬で十分にコントロールできなくなった人に対して選択される治療です。

行われる手術の種類
① 脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)

電極を埋め込んで脳を刺激する方法。脳内の特定の部位(視床下核や淡蒼球など)に電極を埋め込み、微弱な電気刺激を送ることで症状を抑える。体内に小型の刺激装置(ペースメーカーのようなもの)を埋め込み、電気刺激を調整する。

メリット
  • 薬の効果を安定させ、「オン・オフ現象」や「ジスキネジア(不随意運動)」を軽減。
  • 震え(振戦)を抑える効果に優れている。
  • 薬の量を減らせることがある。
  • 体内に埋め込む機器の設定を調整できるため、効果の調整が可能。
デメリット・リスク
  • 脳内に電極を埋め込むため、手術リスク(出血・感染)がある。
  • 手術後も調整やメンテナンスが必要(定期的なフォローアップ)。
  • 認知症がある場合、手術が難しい。
DBSは、薬の効果が不安定な人や、ジスキネジア・振戦が強い人に有効です。
② レボドパ・カルビドパ持続経腸療法(LCIG)

レボドパ製剤を腸に直接持続投与する方法。レボドパ+カルビドパのゲルを、胃瘻(いろう)チューブを通じて直接小腸に持続的に投与し、血中の薬の濃度を安定させ「オン・オフ現象」を軽減する。

メリット
  • レボドパの血中濃度が安定し、「オン・オフ現象」が改善。
  • 経口投与(飲み薬)よりも効果の変動が少ない。
デメリット・リスク
  • 胃瘻(いろう)チューブの管理が必要。
  • 手術に伴う感染リスクがある。
DBSが難しい人や、レボドパの効果を安定させたい人に選択される治療法です。
③ ヴィアレブ配合持続皮下注治療(CSCI)

レボドパ製剤を皮下に持続投与する方法。レボドパ+カルビドパ(ヴィアレブ)を専用のポンプを用いて皮下に持続的に投与し、血中の薬の濃度を安定させ「オン・オフ現象」を軽減する。

メリット
  • レボドパの血中濃度が安定し、「オン・オフ現象」が改善。
  • 経口投与よりも効果の変動が少ない。
  • 胃瘻(いろう)チューブが不要で、手術の必要がない。
デメリット・リスク
  • 皮下注射部位に皮膚の炎症や硬結が生じることがある。
  • ポンプの管理が必要(薬剤の交換、装着の調整など)。
  • 長期間の使用で皮膚の負担が蓄積する可能性がある。
DBSが難しい人や、レボドパの効果を安定させたいが手術を避けたい人に適した治療法です。
④ 焼灼術(定位脳手術)

脳の特定の部位を熱で焼き、異常な神経活動を抑える手術。近年はDBSが主流のため適応は限られる。視床(振戦を抑える)や淡蒼球(ジスキネジアを抑える)をターゲットにする。近年は「超音波焼灼術(MRgFUS)」が注目されている。

メリット
  • DBSのように体内に機器を埋め込む必要がない。
  • 特に「振戦型パーキンソン病」に効果がある。
デメリット・リスク
  • 不可逆的な治療(DBSのように調整できない)。
  • 両側に行うと、言語障害や運動障害が出るリスクがある。
DBSができない人や、振戦が主な症状の人に適用されることがあります。
⑤ 集束超音波治療(FUS: Focused Ultrasound Surgery)

高強度の超音波を集中的に照射し、異常な神経活動を抑える治療法。切らずに治せる非侵襲的な治療法として注目されている。MRIガイド下で超音波を脳内の特定部位(視床や淡蒼球)に集束させ、熱エネルギーで病変部を焼灼する。MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)として振戦型パーキンソン病に適応がある。

メリット
  • メスを使わず、開頭手術なしで治療が可能(非侵襲的)。
  • DBSのように体内に機器を埋め込む必要がない。
  • 振戦型パーキンソン病に有効。
デメリット・リスク
  • 不可逆的な治療(DBSのように調整ができない)。
  • まだ片側にしか治療の適応が無い。
  • 治療後に効果が減弱する可能性がある。
DBSができない人や、振戦が主な症状の人に適した治療法です。
どの手術を選択するか?
手術方法適応となる症状メリットデメリット
脳深部刺激療法(DBS)オン・オフ現象、ジスキネジア、振戦調整可能、効果が長持ち手術リスク、定期的な調整が必要
持続経腸療法(LCIG)オン・オフ現象が強い人、高齢者レボドパの効果を安定させる胃瘻の管理が必要
ヴィアレブ配合持続皮下注治療オン・オフ現象が強いが手術を避けたい人手術不要で持続投与が可能皮下注射部位の炎症や硬結のリスク
焼灼術(MRgFUSなど)振戦が主な症状の人体内に機器を埋め込まなくてよい効果が不可逆的、適応が限られる
集束超音波治療(FUS)振戦が主な症状の人、非侵襲的治療を希望する人非侵襲的で開頭手術が不要効果が不可逆的、両側治療ができない

年齢・症状・合併症の有無に応じて適切な治療法を選択します。


まとめ
  • パーキンソン病の治療はまず薬物療法が基本だが、薬の効果が不安定になった場合は手術が検討される。
  • 手術が適応となるのは、「オン・オフ現象」「ジスキネジア」「振戦」が強い場合。
  • これまで「脳深部刺激療法(DBS)」が最も多く施行されており、電極を埋め込んで脳を刺激する。
  • 他に「レボドパ持続投与(LCIG)」や「ヴィアレブ配合持続皮下注治療」「焼灼術」などの選択肢もある。
医療監修 池中 建介/大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学講座

本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。

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