ボイス

Vol. 5 一言で言うと「オフは辛い」ーヒロさん(パーキンソン病歴20年目)

この記事は、パーキンソン病とともに生きる方の個人の経験に基づく内容です

オフって何?薬が効かない時間の「スイッチオフ」感覚

なっちゃん

こんにちは! 今日はパーキンソン病歴20年目のヒロさんに、「オフ*1」について聞いていきたいと思います。 その前に、「オフって何?」と思う方も多いと思うので、ちょっとだけ説明させてください。パーキンソン病の薬が十分に効いていない状態のことを、私たちは「オフ」と呼んでいます。では早速、オフについて聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。

ヒロさん

はい、よろしくお願いします。

なっちゃん

オフの時の体の状態、症状というか、どんな感じになりますか?

ヒロさん

DBS*3をする前とした後では、全然症状が違うんですけど、DBSをする前のオフは、本当に「スイッチをオフにする」ってよく言うじゃないですか。まさにああいう感じで、突如体が動かなくなる。 もうその場で動けなくなるっていう状態だったんです。 それがきっかけでDBSをしたんですけど。DBSをした後のオフの症状としては、首や肩、あと言葉が出にくくなる。肩が凝ってくるような感じですね。それと足。足になんか力が自然と入っているような状態……そんな症状です。 DBSをやった後の方が、オフ自体の「深さ」は浅くなったので、「底上げできた」という感じですね。

なっちゃん

そうですね、底上げできてますよね。ありがとうございます。私もオフの時、本当によく分かるんですが、私もDBSをしていて、今この収録の前までちょっとオフだったんです。 今もまだ、ちょっと抜けたような、でもはっきり抜けてないような感じで、肩がバキバキなんですよね。しゃべりにくさもあるし、視界がぼやけたり、集中力もなくなったりします。

ヒロさん

そうですね。視界……目の方が二重に見えるんですよね。本当に疲れるんです。

なっちゃん

ホント疲れますよね。どこを見ても、よく見たらにじんで見えるみたいな。オフの時、私YouTubeとか観て気を紛らわせるんですけど、結局「観てるけど、観てない」みたいな感じなんですよね。 目がぼーっとしてるし、頭も働いてないから、内容が入ってこなかったりもして。

ヒロさん

まさにその通りで。活字とか資料を読んでても、全然入ってこないんですよね。


視界が二重に、体も心も固まるーオフのつらさ

なっちゃん

本当、オフってそういう感じですよね。私もオフの時は、突進歩行*9が出てきたりして、バランスが取りにくいです。

ヒロさん

そうですね。本当に、子どもでもぶつかってこようものなら、ホントにすっ飛んでいくというか、オーバーなリアクションぐらいの感じになりませんか? なんかちょっとしたことで、ボワーッてなっちゃうというか。

なっちゃん

そうそう、なっちゃうんですよね。

ヒロさん

「オフってどんなの?」って言われても、一つで「これ!」って言いにくいですよね。人それぞれ違うし、症状の大きさも違うし。

なっちゃん

難しいですよね……。進行状況によっても、オフの感じってちょっと違いますもんね。私、最初オフの時は「ゆっくりできるから、本でも読んで勉強でもしようかな」って呑気なこと考えてたんですけど、「そんなことできやしねぇ!」って思いました。もうオン*2の方が全然いいですよね? オンに越したことない。


オフのときどう過ごす?自分でできる工夫と周りにしてほしいこと

その辛いオフなんですけど、オフの時に「すること」って何かありますか? 私はさっき言ったみたいにYouTubeを観たりするんですけど。

ヒロさん

仕事中だったら、あえてオフの状態で焦らず……ですね。焦っちゃうとまた悪循環になっちゃうんで。焦らずに、じっと耐える。

なっちゃん

忍耐なんですね!

ヒロさん

そうですね、そうしないと。「あ、オフ来たな」とか考えちゃうと、余計足とか固まっちゃうし、手とか肩とか……症状が悪い方に行っちゃうんで。

なっちゃん

分かります! オフって精神的な面もあって、不安なことがあるとすぐオフになったりしますよね。

ヒロさん

そうなんですよ。何も考えないっていうのは難しいけど、でも自然と気持ちを落ち着かせる、ということが大事ですね。

なっちゃん

うん、そうですね。結構、精神大変ですよね。自分で意識してないところで来るじゃないですか。今まで人前で話すことをやってきた経験があっても、パーキンソン病になってから同じように人前で話そうとすると、それだけで緊張しちゃって、オフが来たりして。

ヒロさん

そうそう、そうなんですよ。ちょっと不安なこととかショックなこととか、精神的に「あ〜」っていうことがあったら、もうすぐ来ますもんね。

なっちゃん

言葉が出てこないんですよね。しゃべってても、「あれ? 何しゃべるんだっけな?」って考えちゃうと、もう止まってしまって。しばらくシーン……って。フリーズした感じになりますよね。 私、オフの時に横になるとき、うつ伏せになって寝るとちょっと力が抜ける感じがして、いいかなと思うんです。でも、オフでしんどいから横になってても、横になること自体もちょっときつい時があるじゃないですか。体全体が固まっているから。 「ゆっくりしていいよ」って言われても、「どうやってゆっくりするんだろう?」って思うことがあります。「オフだから横になっとけば?」って言われても、「横になるのもしんどいんだよな」という感じで。

ヒロさん

そうですね。

なっちゃん

今話したのが、オフの時に自分ですることなんですけど、周り、家族とかにしてほしいことってありますか?

ヒロさん

周りのサポートですよね。強いて言うんだったら、「そっとしといてくれ」と(笑)。 いろんなことを言われて、「大丈夫か?」と聞かれたとしても、それに答えるのにもまた労力を使うし。しゃべらずに、そっとしといてくれ、ですね。

なっちゃん

わかるかも、それ。オフの時に何か持ってきてほしい時はお願いするけど、あとはもうそっとしといてほしい。あとはマッサージしてもらったり。しんどすぎて肩が張っているから、ちょっと楽になったりはするんですけど。 あと、同じ病気の人と話してたんですけど、「電話で話すと意外と抜ける」って言ってて。オフで「しんどい」って頭がいっぱいになるじゃないですか。だから同じ病気の人同士で、よく私も電話してたんですよね。オフの時にしんどいと、しんどいところばっかりに意識がいくけど、人と話すことに集中すると抜けやすくなる、って言ってて。ただ、スマホを持つことさえもしんどいオフもあるから、その時々なんですけどね。


生活の中で困る「見えないオフ」

オフって、食事との関係もありますよね。

ヒロさん

そうですね。食事をしたあと薬を飲むのと、食事をするタイミング。僕の場合は、食事よりも薬を先に飲むことが多いんですね。

なっちゃん

私もそうですね。

ヒロさん

そうすると、薬の効きが悪いのか、なんかモヤモヤするような、ダラダラとしたオフが強くなっている感じがあるんです。

なっちゃん

ご飯食べたあとですよね?

ヒロさん

うん。

なっちゃん

ご飯食べたあと、私も薬の効きが悪いんですよ。結構それ、よく聞きます。なので、朝一の「エンジンを吹かせる」ときは、もう本当に空腹時に飲んでます。朝起きて、そのまますぐ飲む、みたいな感じで。

ヒロさん

そうですよね。

なっちゃん

私もそうです。でもそのあと、私は2時間おきに飲んでるんで、ご飯のタイミングを気にしてたら何も食べられなくなってくるので、そこから先はあまり意識しないようにしています。あまり神経質になってもなぁと思って。

ヒロさん

2時間おき?

なっちゃん

そう、2時間おき。

ヒロさん

スタレボ*8でしたっけ?

なっちゃん

えっと、マドパー*7ですね。朝のエンジンを吹かせるために、4時と6時に100ずつ飲んで、そこから2時間おきに飲んで、夕方もまた100なんですけど、やっぱり夕方から効きが悪くなるんで……。

ヒロさん

うーん。マドパーでもやっぱり効きにくい時ありますよね。

なっちゃん

そう。飲んだからといって薬が必ず効くとは限らないじゃないですか。それがまた難しいところで。仕事をする上では本当に大変だと思います。 「オフでしんどいけど、『薬飲んだから大丈夫でしょう』と言われる」とか、でも薬が効かない時もあるから……。そういう面で仕事されてる方って、本当に大変だろうなと思います。

オフで困った経験って、他にもありますか?

ヒロさん

オフだから、というわけではないかもしれませんが、通勤の電車の中ですね。振動に耐えられなくて、ちょっとバランスを崩しちゃうと、一気に倒れちゃうことが多々あります。 どこかつり革とか手すりを持って固定しておかないと、不意に揺れたり、予想外の動きをされると困りますね。何度も本当に、つかまるところがなくて「あーっ」となって、後ろに倒れて他のお客さんに迷惑をかけたりということもありました。 オフって、要は体が動きにくいけど、見た目は結構普通に見えちゃうんですよね。よっぽどひどいオフだとヨダレが出たり、目が虚ろになったりもしますけど、そうじゃない限りは普通に見える。だから急に倒れたりすると、周りもびっくりしますよね。

なっちゃん

通勤で思い出したんですけど、エレベーターとかは大丈夫ですか?

ヒロさん

エレベーターに乗っているとき? 動いている箱自体は大丈夫ですね。上下の動きは平気なんですけど、横揺れになるとたちまちバランスを崩しちゃう。

なっちゃん

エレベーターってみんな乗りたいと思うんですけど、私もオフの時は乗りたいんですよね。でも乗ったあと、そこから方向転換するのがすごく難しくて。ちょっと立ち位置を変えたりとか、買い物でレジに並ぶ時、「こっち空いてるんで、こっちに来てください」とか言われても、急にその方向を変えるのが難しかったり。 日常生活でいうと、買い物に行く時はオンで行っても、普通にオフになったりして。お店の角っこでずーっと固まってて、何回もお店の人からチラチラ見られたり。 動きにくいけど、変に思われるのも嫌だから、商品を見ているふりをするんですけど、その動作がゆっくりすぎて、逆に怪しく見られちゃったり(笑)。何回もチラチラ見られたこともあります。 ゆっくりすぎる動きって、周りから見るとちょっと変に見えるのかな、と思います。


オフがDBSを決断させた

ヒロさん

最初にも言ったけど、DBSをするきっかけ、「もうこれしかない、DBSしかないな」と思ったのが、やっぱりオフだったんですよね。 当時は2時間おきとか1時間半おきとか、そのくらいのサイクルでオンとオフを繰り返していて、薬に翻弄されているような状態でした。そこを、とりあえずフラットな状態にしないことには仕事ができないと思って。 発症して20年目なんですけど、DBSをしたのは2011年の夏で、発症が2005年ぐらい。ちょうど丸5年くらいの時です。

なっちゃん

大体、内服は5年ぐらいで厳しくなるって話、聞きますもんね。私も8年ぐらいだったかな、DBSしたの。そこで底上げができたから良かったんですけど、私もDBSをするきっかけはオフでした。

ヒロさん

やっぱりそうですよね。あれはキツイ。

なっちゃん

あれは生きてる心地しないですもんね。本当にね、固まってるだけじゃない。動きにくいだけじゃない、本当に!

ヒロさん

そうなんですよね。オフはキツイ。

なっちゃん

キツイけど、今でもオフってありますか? DBSをしても、オフは結局あるんですか?

ヒロさん

うん。僕も2時間おきに薬を飲んでますけど、2時間ちょっと経つと、肩がちょっと……とか、言葉が出てこない、締め付けられているような感覚とか、そういうこわばりは感じます。そこで薬を飲めば15分、20分くらいで効き始めるので、それでなんとか1日を過ごす感じです。 ガッツリしたオフが来ることは、DBSをしてからはあまりなくなりましたね。

なっちゃん

それはやっぱりいいですよね! 私も、ちょっと横にならないとしんどい時はあるけど、DBSで底上げできているから、前ほどのしんどさはないです。 してなかったら今どんな生活を送ってるんだろうと思ったら、多分怖くて……想像できないですね。もう戻りたくないです。病気になる前には戻りたいと思うけど、病気になってからDBSをする前の状態には戻りたくない。

ヒロさん

そうですね。もう……怖いですもんね、あのオフを知ってしまうと。

なっちゃん

DBSのターゲットは淡蒼球*5ですか?

ヒロさん

いやいや、視床下核*4ですね。

なっちゃん

視床下核か。私は淡蒼球なんですけど。入れる場所によって、薬が減ったり減らなかったりする、って聞きますよね。DBSも目的によって違うし。 私の場合は、ジスキネジア*6が激しかったんですよね。なので、「とりあえずジスキネジアをどうにかした方がいい」ということで淡蒼球になったんです。 一日中「動くか止まるか」みたいな生活で、話していると画面から飛び出るぐらい揺れていた時期もありました。でも、それが今はもうなくなったので、良かったと言えば良かった。ただ、オフがもうちょっとどうにかなったらいいなとは思うけど、あんまり欲張ってもなぁ、って。

ヒロさん

僕はジスキネジアは普段あまり感じてなかったですね。DBSする前から。動画で見るような激しいジスキネジアの方もいらっしゃいますけど、あそこまでではなかったです。 薬もいろいろな種類を飲んでますけど、やっぱりバランスですよね。薬によって作用が違うし、その組み合わせによってだいぶ変わってくる。

なっちゃん

確かに、皆さん飲んでる薬も違うし、同じ薬でも量が違ったりしますもんね。一概に「これがこう」とはなかなか言えない。 とりあえず一言で言うと、「オフは辛い」。今こうやって笑ってるけど、本当にオフが辛すぎて泣くこととか、普通にありますからね。

今日はヒロさんに「オフについて」を聞きました。 一言で言うと、「オフは辛い」。でも、DBSや薬との付き合い方、周りとの関わり方で、少しでもその辛さを軽くしていけたらと思います。ヒロさん、今日はありがとうございました。

ヒロさん

ありがとうございました。

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本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言・診断・治療に代わるものではありません。症状や治療方針については主治医にご相談ください。

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